おやすみなさい

耳をすませば──なにか聞こえてくる。
FMラジオを切って,パソコンの電源を落として,耳鳴りがした。キーンという高音が離れない。耳を塞いだ。塞げば塞ぐほどその音は鋭さを増していく。
布団に入り目を閉じた。眼前は真っ暗になるどころか,モーションエフェクトが掛かったかのような抽象的な図柄が浮かんぶ。部屋の灯りをすべて消した。目が慣れるまでは真っ暗だった。否応なしに視覚に訴えてくる妙な映像と,同じく否応なしに聴覚に訴えてくる耳鳴りとに僕は苛立った。
チクショウと叫びたいが声にならなかった。もちろんそんな声は音になる必要性はない。音になると途端にリアルな声に驚く。夢から一瞬で醒めたが如く。自分の声が出ないとことを確認し,だから側に誰もいなくてよかったと思った。